皆さん、こんにちは。
港区新橋・芝大門でスモールビジネス支援をしている税理士の波多です。
今日のブログでは、「【消費税】社宅を購入する場合の注意点」について、分かりやすく解説していきたいと思います。
以前のブログでは、「社宅による節税効果」を「社宅を賃貸借した場合」で紹介させていただきました。
【節税】社宅でなぜ節税できるのか? ~スモールビジネスでの活用方法~ | 【相談しやすい税理士事務所】はた国際会計事務所 (hata-crossborder.com)
社宅を導入する場合、「賃貸借契約」を締結するケースが多いかと思いますが、まれに法人で社宅を購入するというケースもあります。
社宅を購入した場合、賃貸借をするよりも節税効果が大きくなりますが、導入へのハードルは高くなります。
また、令和2年度の税制改正によって、建物部分の購入に係る消費税の取扱いが変更され厳しくなりました。
これは金地金の売買を繰り返して、消費税の還付を受ける「金地金売買スキーム」を封じ込めるための改正でした。
今回のブログでは、法人で社宅を購入する場合における、「居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限」も含めて、分かりやすく解説していきます。
転売目的での不動産購入を考えているかたも要チェックです。
目次
社宅を導入するメリットは、以前のブログでご案内させていただきましたが、「生活費の一部が会社の経費」になることです。
それでは、賃貸借契約ではなく、社宅を購入するメリットは何でしょうか。
主なメリットとしては、①建物部分の減価償却費を経費計上できることや、②建物部分に係る消費税が控除できることがあげられました。
しかし、②の消費税に関するメリットは、令和2年度の税制改正によって、建物部分に係る消費税が控除できない場合があり注意が必要です。
この「居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限」を中心に分かりやすく解説していきます。
なお、社宅を購入するハードルとしては、資金の問題もあります。
現金で一括購入できればいいですが、そこまでの資金を用意することは難しいことが多いかと思います。
また、法人で金利が優遇される住宅ローンを組むことはできないので、融資を受けるとすれば事業用融資になります。
そのため、社宅を購入するには、資金面のハードルがあります。
購入した建物が、「居住用賃貸建物」に該当した場合、その建物の購入に係る消費税は控除できないことになります。
建物部分が2千万円であれば、消費税は2百万円になりますので、影響は大きいですね。
「居住用賃貸建物」とは、以下に該当するものをいいます。
①非課税となる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物
②高額特定資産または調整対象自己建設高額特定資産に該当するもの
分かりにくい言い回しですね!
①については、店舗用の建物など、明らかに人が居住するもの以外は該当するという意味です。
②については、ザックリと言えば「税抜価額が1千万円以上」のものをいいます。
例えば、建物部分が2千万円のマンションの一室を購入して、これを事務所用に転貸することを予定していたとしても、「建物の構造及び設備の状況その他の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなもの」ではないため、「居住用賃貸建物」に該当し、その建物部分に掛かった消費税は購入時に控除できないことになります。
マンションの一室を社宅として購入した場合、以下の2つのケースが考えられます。
(ケース1)社宅の使用料を徴収する場合
(ケース2)社宅の使用料を徴収しない場合
(ケース1)の場合、社宅は「居住用賃貸建物」に該当します。
一方、(ケース2)の場合、社宅の使用料を徴収せず、無償で貸し付けることがその取得の時点で客観的に明らかな社宅は「居住用賃貸建物」に該当しないこととされています。したがって、その取得に係る消費税は控除することができます。
これは、国税庁の質疑応答事例に掲載されている取扱いになりますのでご参照ください。
上記のとおり、「居住用賃貸建物」に係る消費税は控除できないことになりますので、税抜経理をしていれば「資産に係る控除対象外消費税額等」が生じることになります。
「資産に係る控除対象外消費税額等」は、以下のいずれかの取扱いとなります。
①全額損金算入できるケース
「課税売上割合が80%以上」の場合等には、損金経理することによって、全額損金算入することが可能となります。
したがって、「居住用賃貸建物」に係る消費税は、その事業年度で全額損金算入されるケースが多いかと思います。
②繰延消費税額等として償却するケース
上記①により全額損金算入できなかった場合、「繰延消費税額等」とされ、損金経理した金額のうち、以下の算式で計算した金額に達するまでの金額が損金算入されます。
(繰延消費税額等が生じた事業年度)
繰延消費税額等×その事業年度の月数÷60×1/2
(その後の事業年度)
繰延消費税額等×その事業年度の月数÷60
③資産の取得価額に算入するケース
「資産に係る控除対象外消費税額等」を建物の取得価額に算入している場合には、減価償却によって損金の額に算入されることになります。
「居住用賃貸建物」に該当する社宅を一定の期間内に売却した場合、その社宅に係る消費税に「課税譲渡等割合」を乗じた金額を、その譲渡をした課税期間の仕入れにかかる消費税額に加算することができます。
つまり、社宅を売却した場合、購入時に控除できなかった消費税を、売却時に一部控除することができるのです。
「課税譲渡等割合」とは、以下のとおり計算されます。
「課税譲渡等割合」=課税賃貸用の貸付けの対価の額の合計額+譲渡の対価の額 / 貸付けの対価の額の合計額+譲渡の対価の額
なお、社宅のケースではないかと思いますが、一定の期間内に事務所などとして貸し付けていた場合にも、同様に調整計算が行われます。
社宅を購入した場合の消費税の取扱いご理解いただけたでしょうか。
資金面から社宅を購入するケースは少ないかと思いますが、購入時には消費税の取扱いを事前に検討しておくことが重要となります。
上記は概要をまとめたもので、他にも様々な細かい要件等ありますのでご留意ください。
不動産に関する消費税の取扱いは、特に慎重に検討する必要があります。
それでは、また次回のブログで!
税理士 波多倫己(はた ともみ)
法人・ミニマム法人の設立や個人事業の開業などスタートアップの支援、海外取引など国際税務の支援に力をいれている事務所です。
新橋・芝大門エリアの国際税務会計事務所で、新橋・汐留・浜松町・芝大門からアクセス可能です。
中野区に在住していますので、中央線や丸の内線をよく利用しています。
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