皆さん、こんにちは。
港区新橋・芝大門でスタートアップの支援をしている税理士の波多です。
今日のブログでは、「倒産防止共済の本当の活用方法」について、分かりやすく解説していきたいと思います。
ちまたにある「節税方法」というのは、多くの場合「課税の繰り延べ」です。
つまり、今年の税金は30万円安くなるけれど、将来の税金が30万円増えるというものです。
この税金が安くなるときだけを切り取って、節税商品を販売しているケースもあるので要注意です。
今回のブログでは、会社経営者も個人事業主も正しい知識をもって判断できるように、倒産防止共済の本当の活用方法を分かりやすく説明していきます。
経営セーフティ共済|経営セーフティ共済(中小機構) (smrj.go.jp)
目次
倒産防止共済とは、「中小企業倒産防止共済制度」のことで、「経営セーフティ共済」とも呼ばれます。
主な特徴としては、「借入機能」と「節税機能」があります。
その名のとおり、中小企業のドミノ倒産を防ぐための制度ですが、掛金が損金または必要経費に算入できるため、節税方法としても広く知られています。
一方、解約した場合の解約手当金は収益として課税されます。
つまり、税率が同じであれば、本当の意味での節税効果はありません。
そのため、出口戦略まで検討しておくことが重要となります。
なお、継続して1年以上事業を行っている中小企業者(会社または個人事業主)であることや、業種に応じて資本金の額や従業員数の基準によって加入要件が設けられています。
倒産防止共済の主な機能が、「借入機能」です。
取引先が倒産した場合、最大で掛金総額の10倍(最大8,000万円)を無担保・無保証人で受けることができます。
しかし、共済金の借入額の10分の1に相当する額が、払い込んだ掛金から控除されます。
つまり、500万円の借入れを行えば、50万円控除されてしまうことになります。
利率として考えれば10%なので、高い利率ですね。
また、解約しなくても、解約手当金の95%を上限として借入れできる制度もあります。
しかし、1年で一括返済する必要があり、利息や印紙代も掛かります。
倒産防止共済のもう一つの機能が、「節税機能」です。
掛金の全額が、損金または必要経費に算入できます。
掛金は月額5千円から20万円まで自由に選ぶことができて、増額や減額も可能です。
積立上限は800万円です。
前納制度を使って1年分まとめて支払った場合、支払った事業年度・年で全額を損金・必要経費に算入することができます。
なお、任意解約した場合でも、解約手当金を受け取れます。
掛金を40カ月以上支払っていれば、掛金の全額が戻ってきます。
納付月数が11カ月以内であれば、解約手当金は受け取れません。
納付月数が12カ月から39カ月であれば、80%から95%の率で解約手当金を受け取れます。
ここからが本題となります。
上述のとおり、節税効果ばかりに着目しがちですが、解約した場合の解約手当金は収益として課税されます。
そのため、出口戦略まで検討しておかなければ、節税効果を得ることはできません。
例えば、以下のようなケースでは、節税効果を得ることができます。
(例①)
掛金支払時に利益が出ていて、解約時には赤字となっているケース
(例②)
所得が多く税率が高いときに掛金を支払って、所得が低く税率が低いときに解約するケース
この場合、所得差・税率差によって、節税することが可能となります。
例えば、中小法人であれば、法人税の税率は800万円以下まで税率は15%となります。
一方、800万円超の税率では23.2%になり、所得によって税率が異なってきます。
このように掛金納付時と解約時の所得差・税率差をうまく活用することがポイントになります。
個人事業の場合、事業所得以外の収入(不動産所得等)には、掛金が必要経費として算入が認められないため注意が必要なります。
また、個人事業主の場合には、「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を確定申告書に添付する必要があります。
会社(法人)の場合には、「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」(法人税申告書別表10(7))と「適用額明細書」を確定申告書に添付する必要があります。
経理処理としては、「保険料」としてPL(損益計算書)で処理することが一般的かと思います。
銀行などからの資金調達が不要な会社や個人事業主であれば、この処理が一般的かと思います。
一方、銀行からの借入れを行っている会社や個人事業主の場合、「保険積立金」としてBS(貸借対照表)で資産計上することをおススメいたします。
理由としては、決算書上の経費が少なくなり、BSの純資産が増え、銀行の評価も高くなるためです。
会社で資産計上した場合、法人税申告書で「減算処理」することを忘れないように注意しましょう。
掛金が少額であれば「保険料」として処理してもよいかと思います。
今日は、倒産防止共済の活用ポイントをご案内いたしました。
繰り返しになりますが、課税を繰り延べる節税の場合、出口まで見すえた戦略をたてることが重要となります。
この考え方は、課税を繰り延べる節税方法に共通した考え方です。
支払時の節税効果をうたった節税商品をすすめられた場合、この考え方を思い出してご検討ください。
実際に加入・購入される際には、事前に顧問税理士に相談しましょう。
それでは、また次回のブログで!
税理士 波多倫己(はた ともみ)
法人・ミニマム法人の設立や個人事業の開業などスタートアップの支援、海外取引など国際税務の支援に力をいれている事務所です。
新橋・芝大門エリアの国際税務会計事務所で、新橋・汐留・浜松町・芝大門からアクセス可能です。
中野区に在住していますので、中央線や丸の内線をよく利用しています。
中野駅、新中野駅、中野坂上駅、西荻窪駅、国分寺駅あたりにはよく出没します!
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