
皆さん、こんにちは。
中野・新宿エリアの税理士事務所、はた会計事務所の波多です。
はた会計事務所では、海外出向されるお客様など非居住者からのご相談も多くいただきます。
海外赴任が決まったとき、多くの方が悩むのが「日本の自宅をどうするか」です。賃貸に出すか・売却するかを考える方も多いでしょう。
<賃貸の場合にはこちらをご参照ください>
「海外赴任中に自宅を貸したら確定申告は必要?源泉徴収の要否・納税管理人の設定を税理士が解説」>
海外赴任中に自宅を売却すると、日本に住んでいなくても日本で確定申告が必要になります。買主によっては売却代金の10.21%が差し引かれ、確定申告をしないとそのお金は戻ってきません。
この記事では、はた会計事務所に実際に寄せられたご相談をもとに、税理士の波多が、出国前に知っておきたいポイントを解説します。
<ご相談>
私は、日本の甲社に勤務していますが、今度アメリカのA社に3年間出向することになりました。そのため、日本にある持ち家(土地・建物)を売却しようと考えていましたが、出国時までには売却できず、出国後に売却する予定です。その場合の「日本での確定申告の要否」を教えてください。
<ご回答>
不動産の売却益について、申告分離課税として確定申告が必要になります。
そのため、非居住者であるご相談者の確定申告書の提出や税金の納付等のため、納税管理人を定め届出を行う必要があります。
なお、譲渡代金を受け取る際、10.21%の税率で所得税の源泉徴収がされますので、確定申告で精算されることになります。しかし、譲渡代金が1億円以下で、買主が個人で居住する場合には、源泉徴収は不要とされます。
なお、要件を満たせば、「3,000万円特別控除」を受けることができます。
【この記事でわかること】
- 海外赴任者が「非居住者」になるタイミング
- 売却代金から10.21%が差し引かれるケースと、取り戻す方法
- 3,000万円特別控除を使うための「3年ルール」
- 出国前にやっておくべきことチェックリスト
<ご説明>
1.海外赴任者はいつから「非居住者」になる?
1年以上の予定で海外勤務する場合、原則として出国の翌日から所得税法上の「非居住者」と推定されます。
今回のご相談者は3年間の出向なので、非居住者に該当します。
2.なぜ日本で確定申告が必要なのか?
非居住者の課税所得の範囲は、「国内源泉所得」とされています。
日本国内にある不動産の譲渡による対価は、国内源泉所得に該当します。
したがって、国内にある不動産の譲渡による対価は、日本において課税を受けることになり、確定申告が必要になります。
非居住者の場合、租税条約の検討が必要となりますが、多くの租税条約では、不動産の所在地国で課税されます。
3.源泉徴収の要否
非居住者が受け取る「不動産の譲渡による対価」は、源泉徴収の対象となります。
つまり、譲渡代金を受け取る際に10.21%の税率で所得税が源泉徴収され、残りの金額を受け取ることになります。例えば売却代金5,000万円で買主が不動産会社(法人)の場合、5,105,000円が差し引かれます。売却益に税金がかからない場合でも、確定申告をしないとこのお金は戻ってきません。
しかし、以下の要件を満たす場合には、所得税の源泉徴収はされません。
①個人が支払っている
②その家を自己またはその親族が住むために譲り受けている
③譲渡対価が1億円以下
不動産の売却の場合、買主が売主の非居住者ステータスを知らず、源泉徴収漏れになることがあります。売主側から仲介業者・買主に非居住者であることを伝える必要があります。
4.3,000万円特別控除は非居住者でも使える
マイホームを売却したときの「3,000万円特別控除」は、非居住者でも適用できます。売却益から最大3,000万円を差し引けるため、税金がゼロになるケースもあります。
主な要件は次のとおりです。
詳細な要件は、国税庁HPで確認できます。
海外赴任者にとって特に重要なのが「3年ルール」です。
例えば2026年4月に出国して家を空けた場合、2029年12月31日までに売却する必要があります。「帰国してから売ろう」と考えていると期限を過ぎてしまうことがあるため注意が必要です。赴任中に賃貸に出していても、この期限内の売却であれば適用できます。
また、この特例は確定申告をすることが適用の条件です。税金がゼロになる場合でも確定申告が必要です。
さらに、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合は、税率が低くなる「軽減税率の特例」も併せて使えます。
5.チェックリスト
□出国日と家に住まなくなる日を確認した
□3,000万円特別控除の売却期限(住まなくなってから3年目の12月31日)を把握した
□納税管理人を決め、「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を税務署に提出した
□購入時の売買契約書・領収書など、取得費がわかる書類を保管した
□仲介の不動産会社に、非居住者として売却する予定であることを伝えた
□源泉徴収される可能性と手取り額を確認した
□赴任先の国での申告の要否を確認した

いかがでしたでしょうか?
海外出向される際、日本に残す不動産の取り扱いは頭を悩ます問題です。
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<執筆者プロフィール>
税理士 波多倫己(はたともみ)
はた会計事務所 代表税理士。東京税理士会 ・中野支部所属(登録番号135894)。
「街の国際税務の専門家」として、海外赴任者・外国人・海外取引のある法人・個人の税務を支援しています。相談しやすい身近な事務所として国際税務サービスを提供しています。
国際税務の実務経験20年、税理士法人と事業会社の双方で経験しています。
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